2011年12月29日木曜日

しっかり造って行くには・・・

独立して18年、50才を半ばを過ぎ、木構造、福祉・住環境の勉強を去年あたりから進めています。

木構造
:依頼の多い3階建ては、在来工法は、おのが計画で構造を進めることができるようにしました。

在来軸組工法
今の在来軸組工法は、壁を評価し、その反力を利用して、建物に及ぼす風による力、地震による力に耐えうる数値を割り出し、建物の倒壊を防ぐ計算方法です。
上階の力を下階に伝える水平構面を考慮しながら、下の階へと伝え、地面に逃がす。その課程で接合部が抜けては、大変なので、接合部ごとに、金物が用意されている。抜けぬよう金物を介して、柱ー梁等の接合を釘、ボルトで金属のあて板を通して固定する工法です。その強さを1倍、1.25倍、1.5倍と表し、性能保証の評価も行っています。全て、釘一本から認定された、評価された商品で作り上げます。当然、構造材である柱、梁等も評価された商品を使います。

伝統構法
法隆寺に代表される昔から工法です。宮大工が造る建築といった方がわかりやすいかもしれません。

 渡邉邸 11月3日見学
現存する古民家の修復、再生が、新潟市関川村で行われているとの情報をへ、情報提供者の藤倉氏と視察に行ってきました。国の重要文化財に指定されている渡邉邸です。構造材の修復は終わり、屋根工事もほぼ完了という時期でした。まさに伝統構法の建物です。
30cmのケヤキの柱は、足下が腐り、新しいケヤキの木で継がれています(匠の継ぎ柱)。間口4間の小屋組を、覗くことができて、何重にも左右に組まれ、映像でよく見る京町家の通り庭の吹き抜けを想像していただくとわかりやすいと思いますが、その天井を張る前の全容をみることができました。壮観です。
http://www7.ocn.ne.jp/~wata-tei/index.html

100年単位で修復しながら住まい続ける、使い続ける方法をみた。
私が30才前半の頃、CHハウジングシステムが叫ばれ、スケルトン、インフル、設備更新の造り方が叫ばれ、研究開発、実際に設計し造ってきました。

その造り方の思想は、構造材の持つ耐用年数まで、インテリア、設備を更新し、建物を使い続けようとする考え方です。今風に言うと、大変地球に優しいエコ住宅です。

 夢ハウス新発田の展示場 11月4日見学 http://www.satonoie.jp/
新潟を中心に家造りをしている「夢ハウス」の展示場に立ち寄った。藤倉氏のお兄さんが大工として勤めている家造りの会社です。全国にフランチャイズ展開もしています。
最初の印象は、古民家の現代版。凛とした空間があった。色は、塗り壁と木の色のみ。真壁工法で柱、梁が見栄がかりです。建具も、建具職人の造ったものを採用していました。長く住める予感させる家造りです。

見せる構造材・・・長持ちさせる中心の存在の構造材をいつでも点検できる造りを実現できる

 古材市場が動いている 11月4日見学 http://www.kozai-g.com/
長岡市近郊にある古材倉庫に立ち寄る。一仕事終えた材が、きれいに並べられ展示してあった。次の行き先を待ち望むように・・・。この柱、この大梁、この銘木、この連子窓付き建具とみていくと、お気に入りのその材を中心に据えて、家造りが出来ちゃうくらい、想像力を湧かせる品々でした。

伝統建築委員会 11月13日川越にて聴講 http://www.green-arch.or.jp/dentoh/organogram.html
金物だらけの家造りではなく、昔ながらの工法で評価し、造る方法を指し示めそうとする団体です。
在来軸組工法は、主に「許容応力度計算」法によって、耐力を評価します。金物を使わない伝統構法は、「限界耐力」法という評価方法を現在では、とらなくてはなりません。二の足を踏む作業が待っています。それを少しでも、簡略的に評価できる評価法を確立しようという動きをされている団体です。

柔らかい構造
壊れてもいいところ造っておく。そんな造り方が、全体を壊さない造り方としてある。そのような話を伝統建築委員会の鈴木祥之委員長が言っていた。面白いと思った。

伝統建築には、擦れ動く箇所がある。くさび、貫の類。神社建築の組み物「斗栱(ときょう)」もその一つとされている。

壁の造りも竹で編んだ小舞に土壁、柔らかく、地震で崩れても補修が容易な柔らかい壁だ。

構造を学ぶ内に理解してきた事の一ッに、極端に強い壁を導入すると、まずそこに外力が集中する事だ。可能であれば、弱い壁を分散した方が、安全側に働き、金物も軽微なものとなる。

構造材
流通している材は、集成材が主流となっている。構造等級が示され、構造の評価をしやすくしている。そのエンジニアリングウッドは、小幅の木の均質なもののみを選別し、糊で貼り合わせて造っている。自然の木材が持っている「そり」「節」によるダメージもなく、乾燥材として、使用可能な状態として、現場にプレカットされ、搬入される。現場で見るようになって、ほぼ20年が経ちます。古民家などを見ていると、何年建ち続ける建物をご所望なのですかと、問いたくなる。材料選定にも、かかわる問題が内包されていると思うからである。
今回の原子力の問題と同じで、どういう状況下で維持されているか見える形で検証しないと、その材、システムを信用できないと思うからである。材の持つ耐久性の中で大気暴露が明確になっていないことである。適切に使い続けられるとは、限らないからである。

真壁の可能性
あれこれ、善し悪しをみていくと、長持ちする家を造るのであれば、構造材を太めのものを選定し、真壁工法を採用することがベストかなと思う。意匠上も工夫して梁も見せる工夫も必要であろう。
スケルトン住宅、構造を極力見える形でインフィルを構成していく造り方かなと。



福祉・住環境について

長く愛着をもって住み続ける上で、考えておかなければならないテーマです。学生の頃、教授からここに一枚の壁があったらという話をしていただきました。その状況により、必要な壁は、変化します。たとえば、中学1年を筆頭とする子供3人の5人家族。その家族の10年後の住まいを考えても若干の変化は、否めません。そしてその次の10年後、20年後、やっとローンの完済の頃です。そこまで踏まえて、考えたいと、造っていきたいと思う。





今年のトップニュース:東北大震災

今年は、トップニュースは東北大震災。もたらした脅威に目を奪われました。人が、人の英知が、無残に自然の猛威に裸にされた。宮城。岩手の被災地を藤倉氏とまわってみてきました。建物の見栄えがいい、間取りがいいとか、という今まで苦心して編み出し、提案してきたことが、現地をみて、すーと飛び越えて、防災計画のあり方に心が向かいました。また、テレビで放映された漁師さんのコメント、「この地で生まれ育ち、海の怖さは知っている。これからもこの地で漁師の仕事を続けていく。」今は穏やかな海。10mを超える津波を体験しながらも、そう言い切る。自然との営み、生死をも含めたやりとりを感じた。防災とは、心積もりを含めたやりとりも必要なことであると。